<コラム>エキノコックス症
エキノコックス症とは?
キツネの話題の中で絶対に外すことができない用語だ。
エキノコックス症は、エキノコックス属(Echinococcus)という寄生虫によって引き起こされる感染症である。
日本では主に多包条虫(Echinococcus multilocularis)が北海道で見られ、キツネが終宿主となることで知られている。
しかし、キツネに触れただけで感染するわけではなく、 感染には寄生虫の卵を口から取り込むことが必要となる。
エキノコックスは、サナダムシの仲間に分類される小型の寄生虫である。
成虫と幼虫で寄生する動物が異なることが特徴で、成虫は体長数mm程度と非常に小さく、キツネやイヌなどの小腸に寄生する。
一方、幼虫はネズミなどの体内で成長し、肝臓などに寄生する。
人へはどのように感染するか?
エキノコックスの生活サイクルは下記のようになっている。
1.キツネやイヌの腸内で成虫が育つ
2.成虫が産んだ卵が糞とともに排出される
3.野ネズミが卵を食べる
4.ネズミの体内で幼虫が発育する
5.キツネがそのネズミを食べる
6.再びキツネの腸で成虫になる
人は本来、エキノコックスにとって必要な宿主ではない。
しかし、何らかの理由で虫卵を口から取り込むと感染することがあり、主な感染経路として考えられているのは下記などである。
・キツネやイヌの糞で汚染された手を洗わずに食事をする
・汚染された山菜や野菜、果実を十分に洗わずに食べる
・汚染された水を飲む
つまり、感染源は虫卵であってキツネそのものではないのである。
キツネを見たら感染する、キツネに近づいたら感染する、キツネに触ったら感染するわけではないのでキツネを過度に恐れる必要はない。
また、感染原因は虫卵の体内へ取り込みであるため、風邪のようにヒトからヒトへと感染することもない。
大切なのは上記で挙げた通り、虫卵を体内に取り込まないことであり、
・手洗い、うがいをする
・野菜や果実などは充分に洗ってから食べる
・川など自然の生水を飲まない
ことがエキノコックス症を防ぐうえで重要な対策となる。
症状と治療法
エキノコックス症は潜伏期間が十数年間と非常に進行が遅い病気といわれており、その間ほとんど症状が現れないことがある。
症状の発生メカニズムは幼虫が主に肝臓で増殖することで、下記などの症状を引き起こすことがある。
・肝機能障害
・腹痛
・黄疸
・倦怠感
進行すると命に関わるのだが、潜伏期間が長く発見に時間が掛かってしまうことに加えて、発見時にはかなり進行してしまっている非常に危険な感染症である。
診断には、血液検査や超音波検査、CT検査、MRI検査などが用いられるが、一般的な肝臓検査などでは検知できないためエキノコックス症検知を前提とした特殊な検査が必要となる。
治療法として、エキノコックスは現在の内服薬で死滅させることができない寄生虫ため、基本的には病巣(臓器)の切除が必要となる。
切除が難しい場合は、寄生虫の増殖を抑える薬を長期間服用し続け症状を定期検診する生活を送ることとなる。
さいごに
キツネはエキノコックスの終宿主の一つだが、病気を「広めよう」としているわけではない。
自然界では、キツネと野ネズミの間で寄生虫が生活サイクルを維持しているだけだけなのである。
また、キツネはネズミの個体数を調整するなど、生態系の中で重要な役割も担っているため、エキノコックス症を理由にキツネそのものを危険視・排除するのではなく、正しい知識を持ち、適切な距離を保つことが大切である。
エキノコックス症は北海道を中心に見られる感染症ではあるが、虫卵はどこに潜んでいるか分からない。
日本では衛生管理など整った環境が行き届いており、しばしば忘れがちではあるが、
・手洗い、うがい
・食品衛生管理の徹底
・自然界のものを飲食しない
・野生動物に触れない、近づかない
ことはエキノコックス症に限らず、様々な病気・感染症への予防になるので忘れず実践するようにしたい。