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きつねとぶどう/それでもせかいがつづくなら 狐と葡萄/それでも世界が続くなら

日本のオルタナティブ・ロックバンド「それでも世界が続くなら」による楽曲である。2016年7月20日に2ndシングル『狐と葡萄』の表題曲として発売された。作詞は篠塚将行、作曲はそれでも世界が続くならが担当している。 タイトルは、イソップ寓話「狐と葡萄」に由来する。手に入らなかった葡萄について「どうせ酸っぱい」と価値を下げて自分を納得させる狐の物語を、人間が傷ついた自分を守るために行う「合理化」の象徴として重ねた作品である。公式リリース時の紹介でも、「狐と葡萄」が心理学でいう合理化を象徴する寓話であることが明示されている。 一方で、楽曲の内容は寓話そのものを語り直したものではない。篠塚将行の少年時代の実体験をもとに、いじめ、善意、後悔、自己否定などを描いた非常に個人的な楽曲となっている。

基本情報

タイトル:狐と葡萄
アーティスト:それでも世界が続くなら
作詞:篠塚将行
作曲:それでも世界が続くなら
発売日:2016年7月20日
形態:2ndシングル表題曲
規格品番:BZCM-10005
レーベル:ROCKBELL records/ベルウッド・レコード
国:日本

2ndシングル『狐と葡萄』には以下の3曲が収録されている。

  1. 狐と葡萄
  2. 弱者の行進
  3. 僕らに許された時間

このシングルはタワーレコード限定の数量限定ワンコインシングルとして発売された。前年にメジャーレーベルから自主撤退していたバンドが、ベルウッド・レコード内のROCKBELL recordsへ移籍して最初に発表した作品でもある。

その後、2016年9月21日発売の2ndミニアルバム『52Hzの鯨』にも2曲目として収録された。

2018年6月20日発売のオールタイムベストアルバム『僕は音楽で殴り返したい』にも4曲目として収録されている。

楽曲について

「狐と葡萄」は、篠塚将行自身の少年時代の体験をもとに制作された楽曲である。

歌詞では、子どもの頃、いじめられていた同級生を助けようとしたことで、今度は自分自身がいじめの標的になった経験が描かれている。その出来事を起点として、「誰かを助けようとしたことは本当に正しかったのか」「優しさとは何なのか」という疑問が、大人になった現在まで残り続けている。

当時のリリース紹介でも、この曲について、篠塚の少年時代の原体験から、大人になっても苦しみ続ける一人の人間の半生とその先を描いた作品と説明されている。

単に「いじめに立ち向かおう」と訴える楽曲ではない。

善意によって行動した結果、自分も傷ついてしまった経験を通して、「正しいことをしたはずなのに、なぜこんな目に遭うのか」という非常に答えの出しにくい問題を描いている。

キツネとの関係

本作における狐との関係は、イソップ寓話「狐と葡萄」にある。

この寓話では、狐が高い場所に実った葡萄を見つけ、何度も取ろうとする。しかしどうしても届かず、最後にはその葡萄について「どうせ酸っぱいのだ」と考えて立ち去る。

欲しかったものを手に入れられなかったとき、その対象の価値を低く考えることで自分の失敗や傷ついた気持ちを納得させようとする物語である。

「それでも世界が続くなら」の公式リリース時の紹介では、この寓話が心理学で使われる「合理化」を意味するものとして説明され、その寓話を表題としていることが明示されている。

本作では、キツネそのものが歌詞の主人公として動き回るわけではない。

狐は、人間が自分自身を守るために行う「言い訳」「自己正当化」「諦め」といった心理を象徴する存在として、タイトルに置かれている。

イソップ寓話「狐と葡萄」

「狐と葡萄」は、イソップ寓話の一つとして古くから伝えられてきた物語である。

英語では「The Fox and the Grapes」と呼ばれ、日本では「狐と葡萄」「すっぱい葡萄」などの題名で知られている。

物語の狐は、欲しかった葡萄に何度挑戦しても届かない。

そこで「自分には取れなかった」と認める代わりに、「あの葡萄は酸っぱくて食べる価値がない」と考える。

このことから英語の「sour grapes」という表現も生まれ、手に入らなかったものについて価値がないと言い聞かせる負け惜しみや自己正当化を表す言葉として使われるようになった。

狐と「合理化」

本作で重要なのは、この寓話に登場する狐の心理である。

欲しいものに手が届かなかった狐は、自分が失敗したという現実をそのまま受け入れない。

代わりに「そもそも欲しいものではなかった」と考え方を変えることで、自分自身を守る。

このように、本当の理由とは異なるもっともらしい理由を作り、自分の行動や失敗を納得できるものにしようとする心理は「合理化」と呼ばれることがある。

「狐と葡萄」では、この狐の心理と、人間が過去の傷や失敗について自分自身を納得させようとする姿が重ねられている。作品紹介でも、この寓話が合理化を象徴するものとして題名に用いられたことが説明されている。

「優しさ」を諦めること

楽曲では、主人公が過去に他人を助けた結果、自分自身が傷ついた経験を振り返る。

その経験によって「もう人を助けない方がいい」「優しい人にならなくてもいい」と考えるのであれば、それは自分を守るためには合理的な選択かもしれない。

しかし、その考え方には「狐と葡萄」の狐と同じ構造がある。

本当は誰かを守りたかった。

本当は優しい人間でありたかった。

しかし、それによって傷ついてしまったため、「そんなものには価値がない」と考えることで、自分自身を守ろうとする。

本作のタイトルは、そうした人間の心理を狐の寓話によって象徴している。

キツネは悪者なのか

イソップ寓話の狐は、一般には負け惜しみをする存在として描かれる。

しかし「狐と葡萄」という楽曲では、その狐の行動を単純に愚かだと笑うだけでは終わらない。

人間もまた、耐えられないほど傷ついたときには、自分を守るために考え方を変えることがある。

「あれは必要なかった」
「最初から欲しくなかった」
「正しいことなんてする意味がない」

そう考えなければ、その経験を受け止められない場合もある。

その意味では、本作における狐は単なる狡猾な動物ではなく、「傷ついた自分を守るために現実を解釈し直す人間」の象徴ともいえる。

ミュージックビデオ

「狐と葡萄」にはミュージックビデオが制作されている。

公式サイトでも「狐と葡萄」MVが公開作品として掲載されており、後に収録された2ndミニアルバム『52Hzの鯨』の楽曲として紹介されている。

楽曲だけでなく映像作品としても展開された、それでも世界が続くならの2016年を代表する作品の一つである。

『52Hzの鯨』

「狐と葡萄」はシングル発売後、2016年9月21日発売の2ndミニアルバム『52Hzの鯨』にも収録された。

収録曲は以下の8曲である。

  1. 弱者の行進
  2. 狐と葡萄
  3. ベッドルームのすべて
  4. 11月10日
  5. 着衣の王様
  6. 最終回
  7. 誰も知らない
  8. 死なない僕への手紙

「弱者の行進」に続く2曲目として配置されており、傷ついた人間や社会の中で弱い立場に置かれた人々を見つめる同作の世界観を構成する重要な一曲となっている。

それでも世界が続くならについて

それでも世界が続くならは、2011年に千葉県で結成された日本のオルタナティブ・ロックバンドである。篠塚将行を中心に活動し、実体験をもとにした歌詞と、静けさと激しいノイズが交錯する音楽を特徴としている。

篠塚自身も、自身の歌詞について実体験に基づくことを公にしており、「狐と葡萄」も少年時代のいじめに関する経験から制作された作品として紹介されている。

2016年にはベルウッド・レコード内のROCKBELL recordsへ移籍し、その第一弾作品として2ndシングル『狐と葡萄』を発表した。

「狐と葡萄」は、動物としての狐や妖狐を描いた楽曲ではない。しかし、世界的に知られる狐の寓話を作品の根幹に置き、狐の「手に入らなかったものを否定して自分を守る」という行動を、人間の傷、自己防衛、合理化へと重ねている。

古典的な「狐と葡萄」の寓話を、現代を生きる一人の人間の実体験へ置き換えた狐関連楽曲である。

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