しまはいいろぎつね シマハイイロギツネ
アメリカ合衆国カリフォルニア州沖のチャンネル諸島に固有の、小型のキツネである。
概要
シマハイイロギツネは、アメリカ合衆国カリフォルニア州沖のチャンネル諸島に固有の、小型のキツネである。学名は Urocyon littoralis、英名は Island fox。
本土のハイイロギツネに近縁で、島の環境で小型化した動物として知られる。島ごとに異なる亜種が暮らしており、絶滅寸前まで減少した個体群を保全活動によって回復させた事例でも有名である。出典:米国国立公園局
基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
和名 | シマハイイロギツネ |
学名 | Urocyon littoralis |
英名 | Island fox |
分類 | 哺乳綱・食肉目・イヌ科・ハイイロギツネ属 |
分布 | アメリカ合衆国・カリフォルニア州のチャンネル諸島 |
全長 | 約59~79cm(尾を含む) |
尾長 | 約11~29cm |
体重 | おおむね2kg前後 |
食性 | 昆虫、小型脊椎動物、果実などを食べる雑食性 |
大きさには性別や島による違いがある。出典:Animal Diversity Web
分布と亜種
チャンネル諸島の8島すべてに生息するわけではなく、分布するのは次の6島である。それぞれの島の個体群が、別々の亜種として認められている。
島 | 亜種の学名 |
|---|---|
サンミゲル島 | Urocyon littoralis littoralis |
サンタローザ島 | Urocyon littoralis santarosae |
サンタクルーズ島 | Urocyon littoralis santacruzae |
サンタカタリナ島 | Urocyon littoralis catalinae |
サンニコラス島 | Urocyon littoralis dickeyi |
サンクレメンテ島 | Urocyon littoralis clementae |
島に渡った経緯には不明な点が残る。自然に漂着した可能性に加え、先住民によって運ばれた可能性も研究されている。したがって、「いつ、どのように渡ってきたのか」を一つの説だけで断定することはできない。出典:IUCNイヌ科動物専門家グループ
姿と特徴
背中は灰色を基調とし、体の側面や脚には赤褐色の毛が見られる。腹側は白っぽく、顔にも灰色・白色・赤褐色が入り交じる。ふさふさした尾の上面には黒い模様がある。
近縁のハイイロギツネに似ているが、体はずっと小さい。北米に暮らすイヌ科動物の中でも特に小型であり、限られた島の環境で体が小さくなる「島嶼矮小化」を考えるうえで代表的な動物である。出典:米国国立公園局
生息環境と食べ物
低木林や草地、森林、海岸など、島内のさまざまな環境を利用する。食べ物も幅広く、昆虫、ネズミ類、鳥類、トカゲ類に加え、植物の果実を食べる。
果実ではマンザニータやサボテンの仲間などを利用する。食事の内容は島や季節によって変わり、その場所で手に入るものを柔軟に食べ分ける。出典:米国国立公園局
行動
夜だけでなく、昼間にも活動する。地上で食べ物を探すほか、近縁のハイイロギツネと同じように木登りもできる。
採食は単独で行うことが多い一方、繁殖期にはつがいを形成する。仲間とのやり取りには鳴き声や姿勢、においを使い、尿やふんによるマーキングも行う。出典:Animal Diversity Web
繁殖と子育て
妊娠期間はおよそ2か月で、一度に1~5頭、通常は2~3頭の子を産む。子は目が閉じた状態で生まれ、巣の中で育てられる。
巣には地面の穴、岩の隙間、木の空洞などを利用する。授乳期間は約7~9週間で、成長した子は親とともに巣の外へ出るようになる。出典:Animal Diversity Web
絶滅の危機と回復
島によって異なった減少の原因
1990年代、4つの島の個体群が急激に減少した。
北部のサンミゲル島、サンタローザ島、サンタクルーズ島では、イヌワシによる捕食が大きな原因だった。最も少なくなった時期には、サンミゲル島とサンタローザ島で、それぞれ約15頭にまで減っている。
一方、サンタカタリナ島では犬ジステンパーの流行が深刻な被害をもたらした。同じ種類のキツネでも、島によって危機の原因が異なっていたのである。出典:米国魚類野生生物局
キツネと島の生態系を守る取り組み
回復のために、飼育下繁殖と野生復帰、感染症予防のワクチン接種、イヌワシの本土への移送などが実施された。
さらに、イヌワシの餌となっていた外来の野生化ブタの除去や、かつて島に生息していたハクトウワシの再導入も行われた。キツネを増やすだけでなく、その減少を引き起こした生態系の変化にも対処した点が重要である。出典:米国魚類野生生物局
その結果、2016年には北部3島の亜種が米国の連邦絶滅危惧種リストから除外された。サンタカタリナ島の亜種も、同年に「絶滅危惧(Endangered)」から「危急(Threatened)」へ区分が変更された。出典:米国魚類野生生物局・2016年最終規則
回復後も続く保全
IUCNの種全体の評価では、シマハイイロギツネは準絶滅危惧(Near Threatened)とされる。これは米国の法律に基づく亜種ごとの指定とは別の評価である。