じゅうじきつね 十字キツネ
背中と肩に現れる暗い十字模様が特徴の、アカギツネの毛色の変異型。
概要
十字ギツネは、アカギツネのうち、背中から肩にかけて黒色や暗褐色の十字模様が目立つ個体を指す呼び名である。英語では「Cross fox」と呼ばれる。
独立した種や亜種ではなく、同じアカギツネという種の中に見られる毛色の違いである。赤褐色や灰褐色の毛に暗色の模様が重なり、一般的な「きつね色」の個体とは異なる印象を与える。出典:アラスカ州魚類野生生物局
基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
名称 | 十字ギツネ |
読み方 | じゅうじぎつね |
英名 | Cross fox |
学名 | Vulpes vulpes(アカギツネとして) |
分類 | 哺乳綱・食肉目・イヌ科・キツネ属 |
分類上の位置づけ | アカギツネの毛色の変異型 |
主な特徴 | 背中と肩に黒色~暗褐色の十字模様が現れる |
野生での確認地域 | 北米のほか、日本の北海道など |
食性 | 小型哺乳類、鳥類、昆虫、果実などを食べる雑食性 |
分類と毛色についてはアラスカ州魚類野生生物局、北海道での観察記録については北海道テレビ放送の紹介に基づく。出典:アラスカ州魚類野生生物局、北海道テレビ放送
名前の由来と外見
「十字」という名前は、背骨に沿って伸びる暗い帯と、肩を横切る暗い帯が交差するように見えることに由来する。
体の赤褐色や灰褐色の部分と、背中や肩の黒っぽい部分との対比が特徴である。模様は毛色の濃淡によって作られるもので、線で描いた十字架のように輪郭がそろっているわけではない。
とがった耳や細い鼻先、ふさふさした尾など、体の基本的な形はアカギツネと同じである。出典:ユーコン準州政府、Hinterland Who’s Who
アカギツネの毛色の多様性
アカギツネには、一般的な赤褐色の毛色だけでなく、十字ギツネやギンギツネと呼ばれる毛色も存在する。
十字ギツネは暗い十字模様が目立つ型であり、ギンギツネは黒っぽい地色に先端の白い長い毛が交じり、銀色を帯びて見える型である。いずれも毛色に基づく呼び名で、別種のキツネを意味するものではない。
また、アカギツネでは一度に生まれたきょうだいの中に、異なる毛色の子が含まれることがある。毛色の違いだけで、別の種類や別の家族だと判断することはできない。出典:アラスカ州魚類野生生物局「Foxes Wear New Coats for Spring」
分布と日本での記録
十字ギツネは、カナダやアラスカなどの野生のアカギツネで知られている。カナダの公的な野生動物解説でも、赤褐色型や銀色型と並ぶ毛色として紹介されている。出典:ノースウエスト準州政府
日本では北海道で観察されている。北海道テレビ放送の「十字ギツネを追った6年間」では、写真家の神田博が2010年から撮影した記録を紹介している。キタキツネの子を撮影していた際、黒っぽい毛色と顔の模様を持つ個体に気づいたことが、継続的な観察のきっかけとなった。
同番組の紹介では、森林総合研究所北海道支所の説明として、十字ギツネをキタキツネの毛色の変異と位置づけている。日本で珍しく見える毛色であっても、世界のどこでも同じ頻度で現れるとは限らない。出典:北海道テレビ放送
生態と食べ物
十字ギツネは毛色による呼び分けであるため、基本的な生態はアカギツネとして理解する必要がある。
アカギツネは、ネズミ類やウサギ類などの小型哺乳類を中心に、鳥類、卵、昆虫、果実などを利用する。食べ物の内容は季節や地域によって変わり、余った餌を隠して後から食べることもある。
狩りには聴覚、嗅覚、視覚を使い、草や雪の下で動く獲物を探す。夕方から夜間、早朝に狩りをすることが多い。出典:Hinterland Who’s Who
繁殖と子育て
アカギツネは通常、年に一度繁殖し、約52日前後の妊娠期間を経て子を産む。巣穴で生まれた子は、親から餌を与えられながら成長し、次第に巣の外で活動するようになる。
子育てには両親が関わる。十字ギツネもこの繁殖生活を営むアカギツネであり、毛色が違うことを理由に、独立した繁殖様式を持つものとして扱うべきではない。出典:アラスカ州魚類野生生物局
観察するときの注意
特徴的な毛色は写真の被写体としても目を引くが、野生個体への餌付けは避ける必要がある。人から餌をもらうことに慣れたキツネは、人への警戒を失い、生活圏に近づくことでトラブルに巻き込まれるおそれがある。