おじろすなぎつね オジロスナギツネ

食肉目イヌ科キツネ属に分類される小型のキツネである。北アフリカ、アラビア半島、西アジアから南アジアにかけての砂漠や半砂漠に分布する。

概要

オジロスナギツネは、食肉目イヌ科キツネ属に分類される小型のキツネである。北アフリカ、アラビア半島、西アジアから南アジアにかけての砂漠や半砂漠に分布する。

淡い砂色の体毛、白い尾の先端、大きな耳、毛に覆われた足裏を持ち、高温で乾燥した砂漠環境に適応している。英名に由来して「リュッペルギツネ」や「リュッペルスナギツネ」と呼ばれることもある。

基本情報

  • 分類:哺乳綱・食肉目・イヌ科・キツネ属
  • 学名:Vulpes rueppellii
  • 英名:Rüppell’s fox
  • 別名:リュッペルギツネ、リュッペルスナギツネ
  • 頭胴長:約40~52センチメートル
  • 尾長:約25~39センチメートル
  • 肩高:約30センチメートル
  • 体重:約1.2~3.6キログラム
  • 分布:北アフリカ、アラビア半島、西アジア、南アジアの一部
  • 生息環境:砂漠、岩石砂漠、半砂漠、乾燥した草原や低木地
  • 食性:雑食
  • 活動時間:主に夜間および薄明薄暮時
  • IUCNレッドリスト:低懸念(LC)

名前の由来

英名のRüppell’s foxは、ドイツの博物学者・探検家であるエドゥアルト・リュッペルに由来する。種小名のrueppelliiも彼の名前にちなむ。

和名の「オジロ」は、ふさふさした尾の先端が白いことに由来する。尾の先端が通常黒いオグロスナギツネとは、名前の上でも対照的である。

外見

細身の体と比較的短い四肢、大きく幅の広い耳、長くふさふさした尾を持つ。雄は雌よりわずかに大きくなる傾向があるが、外見上の性差は目立たない。

体毛は淡い黄褐色や砂色を基本とし、背中は赤みや灰色を帯びる。腹部、顎、頬、尾の先端は白い。目から吻の側面にかけて暗褐色の模様があり、ほかの砂漠性キツネと見分ける手掛かりになる。岩の多い地域では、灰色がかった毛色の個体も見られる。

冬毛は柔らかく密度が高い二重構造となり、砂漠の冷え込みから体を守る。夏毛は冬毛より薄く、暑さに対応した状態となる。Animal Diversity Web

砂漠への適応

大きな耳には多くの血管が通り、体内の熱を外へ逃がす働きがある。また、優れた聴覚によって、暗闇のなかで動く昆虫や小動物の位置を捉えることができる。

足裏の肉球は密生した毛に覆われている。この毛は熱くなった砂が肉球へ直接触れることを防ぎ、柔らかい砂の上を移動する際にも役立つ。岩登りに適した裸出した足裏を持つオグロスナギツネとは、対照的な適応である。

淡い砂色の体毛は砂漠の風景へ溶け込み、外敵や獲物から発見されにくくする。飲み水が少ない地域でも、食物に含まれる水分を利用して生活できる。

分布

北アフリカではモーリタニア、モロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビア、エジプト、ニジェール、チャド、スーダン、エチオピア、ソマリアなどに分布する。

アジア側ではイスラエル、パレスチナ、ヨルダン、シリア、イラク、アラビア半島、イラン、アフガニスタン、パキスタンなどに分布する。サハラ砂漠の中央にある極端に乾燥した地域よりも、その周辺部やオアシス、山塊に近い地域で見られることが多い。

分布域は非常に広いが、その全域に均等に生息しているわけではない。利用できる食物、巣穴を作れる土地、アカギツネとの競合、人間の居住地などによって分布が左右される。

生息環境

砂の多い砂漠、石や岩に覆われた砂漠、半乾燥の草原、まばらな低木地などに生息する。砂地だけに限定されず、岩の多い場所でも暮らすことができる。

アカギツネと分布が重なる地域では、体の大きなアカギツネとの競争を避け、より乾燥が厳しい場所に生息する傾向がある。オジロスナギツネは、アカギツネが利用しにくい過酷な環境にも進出できる。

巣穴

日中は地下の巣穴で休み、外の高温や外敵を避ける。自ら穴を掘るほか、岩や樹木の下などに巣穴を作ることもある。

繁殖に使う巣穴と、日常の休息に使う巣穴を分ける。休息用の巣穴は小さく、繁殖期以外は1頭だけで利用することが多い。一定期間で別の巣穴へ移ることもある。

繁殖用の巣穴は休息用より大きく、つがいと子どもたちが利用する。外敵に発見されたり周囲に危険を感じたりすると、別の巣穴へ移動することがある。

食性

雑食性で、地域や季節に応じて利用できるものを幅広く食べる。甲虫、バッタなどの昆虫、クモやサソリなどの節足動物、ネズミ類、トカゲ、鳥類、卵などを食べる。

植物質では草、根、塊茎、多肉植物、ナツメヤシなどの果実を利用する。地域によっては昆虫が食物の中心となり、別の地域では小型哺乳類、爬虫類、鳥類の割合が高くなる。

人間の居住地付近では残飯やごみを食べることもある。環境の変化に合わせて食物を切り替えられる柔軟性が、乾燥地での生存を支えている。Animal Diversity Web

生態

主に夜行性であり、日没後から夜明けまで食物を探して行動する。気温が低い冬には、昼間に活動することもある。

繁殖期には一夫一妻のつがいを形成する。つがいの雄と雌は行動圏を大きく重ねるが、隣接する別のつがいとは縄張りを分ける傾向がある。縄張りの境界には主に尿でにおいを付ける。

地域によっては一晩に数キロメートル以上移動し、広い範囲で食物を探す。視覚、聴覚、嗅覚に優れ、におい、姿勢、鳴き声などで仲間と意思を伝える。警戒時には短い吠え声や甲高い声を出し、穏やかな状態では低い声を発する。

肛門付近には強いにおいの分泌物を出す腺がある。外敵に追い詰められると背中を丸めて尾を持ち上げ、分泌物を噴射して身を守ることがある。

繁殖

繁殖期はおおむね11月から1月である。約50~53日の妊娠期間を経て、通常2~3頭の子どもを産む。多い場合は6頭ほどになることもある。

子どもは目が閉じた状態で生まれ、巣穴の中で成長する。生後6~8週間ほどで離乳し、生後約4か月で独立する。性成熟を迎えるのは、生後1年以内と考えられている。

繁殖期には雄と雌が同じ巣穴を利用するが、繁殖期以外は別々の巣穴で休むことがある。雄は巣穴の近くにとどまり、縄張りの防衛や食物の提供などを通して子育てに関わると考えられている。

人間との関係

昆虫やネズミ類を捕食するため、農作物へ被害を与える動物の個体数を抑える役割を持つ。一方で、家禽や小型家畜を襲うと考えられ、地域住民に駆除されることもある。

人間の食べ残しやごみを利用する個体もいるが、居住地への依存は交通事故や人との衝突、感染症への接触を増やす可能性がある。

狂犬病ウイルスを保有する可能性もあるため、生息地域で見かけても接触や餌付けを避け、野生動物として距離を保つ必要がある。

キツネとの関係

オジロスナギツネは、アカギツネ、オグロスナギツネ、フェネックなどと同じキツネ属に含まれる。なかでもアカギツネとは近縁であるが、より小型で、砂漠での生活に適した特徴を持つ独立した種である。

オグロスナギツネとは、尾先の色だけでなく生息環境への適応にも違いがある。オジロスナギツネは尾先が白く、足裏が毛で覆われ、砂の多い砂漠を移動することに適している。オグロスナギツネは尾先が通常黒く、裸出した足裏と湾曲した爪を使って岩山を登ることに適している。

フェネックとも分布域が重なるが、オジロスナギツネのほうが一般に大きい。フェネックと比べると耳は小さく、顔に灰色や暗褐色の模様が見られる点でも区別できる。

保全状況

IUCNレッドリストでは「低懸念(LC)」に分類されている。広い地域に分布しているものの、夜行性で人目に触れにくいため、正確な個体数や地域ごとの増減について不明な点が残されている。Animal Diversity Web

主な脅威として、生息地の開発、無差別な毒餌、交通事故、人間による駆除、アカギツネとの競合などが挙げられる。特に、オオカミやジャッカルなど別の食肉類を対象として置かれた毒餌を、オジロスナギツネが誤って食べる危険がある。

種全体では直ちに絶滅する危険性は低いものの、生息密度が低い地域もあるため、砂漠環境の保全と継続的な分布調査が必要である。