よるのぎんぎつね/さいじょうしろう 夜の銀狐/斉条史朗

「夜の銀狐」は、斉条史朗が1969年に発表したムード歌謡である。作曲は中川博之。作詞者については資料によって「水沢圭吾」と「中山大三郎」の双方の表記が確認できる。 1969年7月1日に日本クラウンからシングルレコードとして発売された作品で、レコード番号はCW-960。日本クラウンは後年の企画盤でも斉条史朗を本曲のオリジナル歌手として扱っており、現在も公式YouTubeチャンネルで「ムード歌謡」として音源を公開している。 題名には「銀狐」とあるものの、歌詞に実在する狐や妖狐が登場する作品ではない。夜の盛り場を思わせる世界を舞台に、華やかな生活の陰で孤独を抱える女性と、その女性に愛情や家庭的な幸せを求めてほしいと語りかける男性を描いた恋愛歌である。

基本情報

曲名:夜の銀狐

歌唱:斉条史朗

作詞:水沢圭吾/中山大三郎表記あり

作曲:中川博之

発売日:1969年7月1日

レーベル:日本クラウン/Crown

シングル品番:CW-960

楽曲時間:3分48秒前後

ジャンル:ムード歌謡、歌謡曲

国:日本

現在のApple Musicでは、2018年1月10日発売の『日本クラウン創立55周年記念企画 「ラブユー東京」ムード歌謡ベスト』収録音源として配信されており、楽曲時間は3分48秒とされている。

日本クラウン公式では同企画盤の6曲目に「夜の銀狐/斉条史朗」を収録している。

作詞者表記について

「夜の銀狐」の作詞者名には、現在確認できる資料間で表記の違いがある。

JOYSOUNDでは作詞者を「水沢圭吾」としており、後年に細川たかしや八代亜紀が歌唱した版についても水沢圭吾名義で掲載されている。一方、歌ネットの斉条史朗版では「中山大三郎」、楽譜資料でも「中山大三郎」と表記されている。

水沢圭吾は中山大三郎が使用した名義として紹介されることがあるため、資料によって名義が異なっているものと考えられる。ただし、本記事では確認できる資料の表記差をそのまま示し、どちらか一方だけに統一しない。

作曲はいずれの主要資料でも中川博之で一致している。

楽曲について

「夜の銀狐」は、夜の都会や盛り場を思わせる世界を舞台とした、大人の男女の恋愛を描くムード歌謡である。

歌詞では男性と思われる語り手が一人の女性へ呼びかけている。女性は表面的な恋愛や華やかな装いの裏側に孤独を抱えている人物として描かれ、語り手はその女性に対して自分の愛情を信じてほしいと訴える。

さらに、一人で過ごす夜や華やかなドレスとは対照的に、二人で住む住居や家庭での生活を思わせる情景が提示される。つまり、夜の世界に身を置く女性に対し、「華やかだが孤独な生活」から「二人で暮らす静かな生活」へ移ることを提案するような構成になっている。

歌詞そのものには、動物としての狐を描写する場面は確認できない。

「銀狐」という題名

本曲を狐関連楽曲として考える際、もっとも注意すべきなのが題名の「銀狐」である。

「銀狐」は一般にはギンギツネ、すなわちアカギツネに見られる黒色・銀色系の毛色を持つ個体を指す言葉として使用される。しかし、本曲の歌詞には野生動物としてのギンギツネは登場しない。

また、

・妖狐である
・人間に化けた狐である
・九尾の狐である
・白狐や神狐の一種である
・稲荷信仰と関係する

といった設定も確認できない。

そのため、題名の「銀狐」を文字どおりの動物として解釈することは適切ではない。

歌詞の内容を踏まえると、夜の世界を生きる女性の姿に「銀狐」という印象的な名称を重ねたタイトルとして読むことは可能である。ただし、なぜ作詞者が「銀狐」という言葉を選んだのかを具体的に説明した公式資料や本人の発言は、今回の調査では確認できなかった。

したがって、「夜に生きる女性を狐に例えた」と断定するのではなく、「女性像に対して狐を思わせる象徴的な題名が付けられている」とする程度に留めるのが妥当である。

「ソーロ・グリス・デ・ラ・ノーチェ」

歌詞では「ソーロ・グリス・デ・ラ・ノーチェ」と聞こえる特徴的なフレーズが繰り返される。

配信されている他歌手の歌唱版では、これをアルファベットで「Solo gris de la noche」と表記している例も確認できる。

このフレーズを「夜の銀狐」「夜の灰色狐」とする説明がインターネット上では見られるものの、通常スペイン語で「狐」を表す語は「zorro」または「zorra」であり、「Solo gris de la noche」という文字列そのものには狐を直接意味する単語が含まれていない。

そのため、このフレーズを単純に「夜の銀狐」のスペイン語訳であると断定するのは避ける必要がある。

本曲における印象的な異国語風フレーズではあるが、その正確な成立事情や作詞者が意図した意味について、信頼できる一次資料による説明は今回確認できなかった。

夜の女性と狐のイメージ

歌詞では、女性はドレスを着て踊りながらも本心を隠し、一人の夜には孤独を抱える人物として描かれる。

こうした「華やかな外見の奥に本当の心を隠している女性」という人物像は、日本語文化における「女狐」や、狐の「人を化かす」「正体を隠す」といったイメージを連想させる余地がある。

また、「銀狐」という語には、普通の狐とは異なる銀色の毛並みから、艶やかさ、夜、妖しさなどを感じ取ることもできる。

しかし、これらは題名と歌詞を組み合わせた場合に可能な解釈であり、作詞者本人が「狐の化ける性質を女性に重ねた」「ギンギツネを女性の象徴として使用した」などと説明した資料は確認できない。

したがって、本曲を妖狐伝承や女狐伝承を直接題材とした歌として扱うべきではない。

キツネとの関係

本曲における狐との関係は、「題名・象徴として狐を使用した楽曲」に分類するのが適切である。

題名には明確に「銀狐」という狐を指す言葉が使用されているものの、歌詞の物語に狐そのものは登場しない。

歌われているのは、

・夜の世界を思わせる女性
・表面的な恋愛
・隠された心
・一人で過ごす夜の孤独
・女性を愛する男性からの呼びかけ
・二人で暮らす家庭への誘い

といった人間同士の恋愛である。

したがって、

「ギンギツネを題材とした動物の歌」

ではない。

同様に、

「妖狐を主人公とした歌」
「九尾の狐の歌」
「狐神・稲荷信仰に関する歌」
「狐の伝承を物語化した歌」

とも確認できない。

一方で、女性が心を隠して夜の世界で生きるという描写と「銀狐」という題名を結び付ければ、狐の妖艶さや本性を隠すイメージを女性像に重ねたものとして読むことはできる。

ただし、それはあくまで解釈の一つであり、命名意図について作者本人による明確な説明は確認できない。

ムード歌謡としての位置付け

「夜の銀狐」は、その後多くの歌手によって歌われてきたムード歌謡の一曲でもある。

日本クラウンは斉条史朗の「夜の銀狐」を『日本クラウン創立55周年記念企画 「ラブユー東京」ムード歌謡ベスト』に収録しており、「ラブユー東京」「柳ヶ瀬ブルース」「たそがれの銀座」「宗右衛門町ブルース」などと並ぶ作品として扱っている。

また、八代亜紀、細川たかし、北川大介、和田弘とマヒナスターズなどによる歌唱音源も存在する。

日本クラウンのギター歌謡曲集でも「夜の銀狐」は斉条史朗の曲として扱われており、昭和のムード歌謡を代表する楽曲の一つとして長く歌い継がれていることが分かる。

狐関連楽曲としての位置付け

「夜の銀狐」は、狐そのものを描いた作品ではないものの、「銀狐」という非常に明確な狐語彙をタイトルに使用しているため、狐関連楽曲として扱うことができる。

ただし、その分類は慎重に行う必要がある。

本曲の場合、

「実在するギンギツネの歌」ではなく、
「妖狐や狐伝承の歌」でもなく、
「人間の女性を描いたムード歌謡に『銀狐』という題名を用いた作品」

という位置付けが最も正確である。

狐の「妖艶」「夜」「正体を隠す」といった文化的イメージとの共通性を見出すことはできるものの、それが作者の命名理由であることを示す一次資料は確認できない。

したがって「ふぉくすなっ♪」では、「タイトル・象徴としての狐」に分類し、実在のギンギツネや妖狐を直接題材とする作品とは区別して掲載するのが適切である。

  • #創作
  • #楽曲
  • #夜の銀狐
  • #斉条史朗
  • #キツネ
  • #歌謡曲
  • #ムード歌謡
  • #日本