きつねのこいぶみ/しんどうきみこ 狐の恋文/新藤きみ子
「狐の恋文」は、ソプラノ歌手・新藤きみ子による日本歌曲・童謡系の楽曲である。作詩は石坂まさを、作曲は新藤建也。2012年3月14日に発売されたアルバム『日本の詩をうたう』に収録されている。アルバム全25曲中22曲目に配置され、楽曲時間は2分11秒である。 『日本の詩をうたう』は、昔から親しまれてきた童謡・唱歌に加え、日本童謡協会主催の童謡祭から生まれた新作童謡や、新藤きみ子のリサイタルで歌われてきたオリジナル曲を収めた作品である。「狐の恋文」も、石坂まさをの詩に新藤建也が曲を付けたオリジナル歌曲として収録されている。 狐との関係について、現在オンラインで確認できる公式資料では歌詞全文や詳しい作品解説までは公開されていない。そのため、狐が誰に恋文を書くのか、実在のキツネなのか、擬人化された狐なのか、妖狐なのかといった物語の細部を推測で補うことは避ける必要がある。 一方で、アルバムの商品紹介では、石坂まさをの詩に新藤建也が曲を付けた作品群について「マジカルな動物の歌」と評する紹介も確認できる。「狐の恋文」は「コブラの踊り」「カエルのお相撲さん」と並び、石坂まさを作詩・新藤建也作曲の動物題材作品として収録されているため、狐を人間的・童話的に描いた楽曲である可能性が高い。
基本情報
タイトル:狐の恋文
歌唱:新藤きみ子
作詩:石坂まさを
作曲:新藤建也
収録アルバム:日本の詩をうたう
発売日:2012年3月14日
収録順:22曲目
楽曲時間:2分11秒
品番:MRS1202
JAN:4582308420026
レーベル:MAPLE MUSIC
形態:日本歌曲/童謡系楽曲
国:日本
2021年2月22日にはアルバム『日本の詩をうたう』が各種ストリーミングサービスでデジタル配信され、「狐の恋文」も配信楽曲の一つとなった。
楽曲について
「狐の恋文」は、タイトルから分かる通り、
狐
と
恋文
という二つの要素を組み合わせた作品である。
「恋文」は、恋心を伝える手紙を意味する。
したがって題名だけを素直に読めば、
「狐が誰かへ送る恋の手紙」
を連想させる。
狐という野生動物に、人間と同じ恋愛感情や手紙を書く行為を重ねた、童話的な発想を持つ題名である。
ただし、現在確認できる公式公開資料には歌詞全文や作品の筋書きが掲載されていないため、
狐が手紙を書く
狐が人間へ恋をする
狐同士の恋である
などを具体的な事実として断定することはできない。
キツネとの関係
本作におけるキツネとの明確な関係は、タイトルの主人公として「狐」が置かれていることである。
「狐の恋文」という題名は、
狐に届いた恋文
とも、
狐が書いた恋文
とも読める。
日本語としては所有・主体の双方の解釈が可能であるため、歌詞を確認できない状態ではどちらか一方へ限定するべきではない。
ただしアルバムの商品紹介では、石坂まさをの詩に新藤建也が曲を付けた作品について「マジカルな動物の歌」とする評があり、本曲も動物を擬人化・物語化した作品群の一つとして捉えられる。
そのため、ふぉくすなっ♪では、
「狐を題材にした童謡・日本歌曲」
として分類するのが最も安全である。
狐と「恋文」
狐と恋愛は、日本の伝承では非常に古くから結び付いてきた題材である。
日本の狐譚には、
狐が人間の女性へ化ける
狐が人間の男性と結婚する
人間と狐の間に子供が生まれる
狐が人間を慕う
といった異類婚姻譚が数多く存在する。
有名なものとしては「葛の葉」の物語があり、狐が女性へ化け、人間と夫婦になる伝承として知られている。
したがって「狐」と「恋」を組み合わせること自体は、日本の狐文化と非常に相性がよい。
しかし「狐の恋文」が葛の葉など特定の伝承を題材としていることを示す資料は確認できない。
あくまで「狐と恋愛」という文化的な接点が存在する、という範囲で捉える必要がある。
「恋文」とは
恋文とは、恋愛感情を相手へ伝えるための手紙である。
現在なら、
ラブレター
という言葉の方が一般的だが、「恋文」にはより古風で文学的な響きがある。
「狐のラブレター」ではなく、
「狐の恋文」
と題することで、童謡や昔話、日本文学を思わせる柔らかい雰囲気が生まれている。
アルバム『日本の詩をうたう』自体が、日本語の詩と歌を大切にした作品であることを考えると、この古風な言葉遣いも作品全体の方向性によく合っている。
擬人化された狐
「恋文」という行為は本来人間の文化である。
現実のキツネが文章を書いて恋文を送ることはない。
そのため、少なくとも曲名の時点で狐には人間的な感情・文化が重ねられている。
これは童謡や童話では非常によく使われる方法である。
動物が、
話す
踊る
恋をする
手紙を書く
相撲をする
といった人間の行動を行うことで、子供にも分かりやすい物語になる。
同じアルバムには「カエルのお相撲さん」「コブラの踊り」も収録されており、いずれも石坂まさを作詩、新藤建也作曲である。
この3曲を並べると、
コブラ=踊り
カエル=相撲
狐=恋文
という形で、それぞれの動物へ人間的な行動を重ねた題名になっている。
「コブラの踊り」「カエルのお相撲さん」との並び
『日本の詩をうたう』の後半には、
- コブラの踊り
- カエルのお相撲さん
- 狐の恋文
という3曲が連続して配置されている。
さらにこの3曲はすべて、
作詩:石坂まさを
作曲:新藤建也
という同じ制作コンビによる楽曲である。
この並びは「狐の恋文」を理解するうえで重要である。
いずれも動物が題名に登場する。
そして、
踊るコブラ
相撲をするカエル
恋文と狐
という、現実とは少し離れた童話的・想像的な世界を思わせる。
CDの商品紹介でも、石坂まさをの詩に新藤建也が付曲した「マジカルな動物の歌」に触れられているため、この3曲を指している可能性が高い。
ただし紹介文が個別曲ごとに説明しているわけではないため、「3曲すべてを明示的にそう呼んでいる」とまでは断定しない方がよい。
妖狐ではなく童話的な狐か
タイトルに狐が登場する楽曲には、
九尾の狐
妖狐
狐火
狐の嫁入り
稲荷信仰
などを題材にしたものが多い。
しかし「狐の恋文」について確認できる公開情報には、
九尾
妖術
変化
狐火
稲荷
神社
といった要素は見当たらない。
また収録アルバムは、童謡・唱歌や新作童謡を中心とする『日本の詩をうたう』である。
そのため現時点では、
「妖狐伝承を扱った楽曲」
とするより、
「狐を童話的・擬人的に扱った日本歌曲」
と分類する方が資料に沿っている。
童謡としての動物
童謡では、動物は非常に重要な題材である。
犬、猫、兎、狸、狐、鳥、虫などが、人間のように感情を持つ存在として数多く歌われてきた。
特に狐は、
ずる賢い
不思議
かわいい
寂しげ
人間を化かす
など多様なイメージを持つため、物語を作りやすい動物でもある。
「狐の恋文」というタイトルは、その中でも「恋をする狐」という柔らかな側面を前面に出している。
怪異としてではなく、感情を持つ一匹の登場人物として狐を扱っている可能性が高い作品である。
アルバム『日本の詩をうたう』
「狐の恋文」が収録された『日本の詩をうたう』は、2012年3月14日にMAPLE MUSICから発売された全25曲入りのアルバムである。Apple Musicでは全25曲・約1時間1分の作品として掲載されている。
収録曲には、
かぜのなかに
宵待草
出船
春よ来い
村祭
赤とんぼ
冬景色
ふるさと
手と手のうた
かあさんにもらった
おりがみのツル
かくれんぼうや
回転ずし
オモチャやさんになりたい
ことば
はっぱがいちまい
中国地方の子守歌
五木の子守歌
春を待ってるふきのとう
コブラの踊り
カエルのお相撲さん
狐の恋文
初恋
恋慕
さくら
が収録されている。
昔から知られる唱歌と、新しく作られた歌曲が同じ一枚に収められているのが特徴である。
「日本の詩」を歌う作品
TuneCoreの作品紹介では、『日本の詩をうたう』について、
童謡・唱歌などの日本の名歌を新しいアレンジで歌った作品であること、
日本童謡協会主催の童謡祭から生まれた新作童謡を収録していること、
新藤きみ子のリサイタルでよく歌われてきたオリジナル作品も収録していること
が説明されている。
「狐の恋文」も、そうした新しい日本語歌曲の一曲として聴くことができる。
ポップスの「狐ソング」とは少し異なり、
詩
ピアノ
ソプラノ歌唱
を軸とした、日本歌曲・童謡の系譜に位置する狐関連作品である。
新藤きみ子
新藤きみ子は、日本歌曲を中心に活動するソプラノ歌手である。
TuneCore Japanのプロフィールでは、桐朋学園大学音楽学部声楽科を卒業し、大熊文子、永長春美らに師事したこと、日本歌曲を中心に演奏活動を行い、特に新作歌曲を多く取り上げてきたことが紹介されている。
また1987年から「日本の詩をうたう」と題したリサイタルを定期的に開催している。
アルバム『日本の詩をうたう』も、その長年の活動を反映した作品である。
新藤理恵のピアノ
アルバム『日本の詩をうたう』では、新藤きみ子がソプラノ歌唱、新藤理恵がピアノを担当している。
そのため「狐の恋文」も、大規模なバンドサウンドではなく、声楽とピアノを中心に味わう歌曲として収録されている。
アルバム全体が「日本の詩」を中心に据えていることから、歌詞の言葉そのものを聴かせることに重点を置いた作品構成である。
新藤建也
「狐の恋文」の作曲を担当したのは新藤建也である。
同アルバムでは多数の新作歌曲を手掛けており、
かぜのなかに
手と手のうた
かくれんぼうや
回転ずし
オモチャやさんになりたい
ことば
はっぱがいちまい
春を待ってるふきのとう
コブラの踊り
カエルのお相撲さん
狐の恋文
初恋
恋慕
などで作曲者としてクレジットされている。
特に「コブラの踊り」「カエルのお相撲さん」「狐の恋文」は、石坂まさをとの組み合わせによる動物題材作品となっている。
石坂まさを
「狐の恋文」の詩を書いたのは石坂まさをである。公式配信クレジットでも作詞者として明記されている。
石坂まさをは、藤圭子の「新宿の女」「圭子の夢は夜ひらく」など、昭和歌謡でも広く知られる作詞家である。
一方『日本の詩をうたう』では、
「コブラの踊り」
「カエルのお相撲さん」
「狐の恋文」
という童話的な動物詩を提供している。
演歌・歌謡曲のイメージが強い作詞家による動物童謡という点でも、興味深い作品である。
2012年のCDと2021年の配信
「狐の恋文」は2012年の作品である。
Apple Musicではアルバム『日本の詩をうたう』の発売日を2012年3月14日としており、MAPLE MUSICから発売されたことも確認できる。
その後、2021年2月22日に同アルバムがデジタル配信され、Apple Music、Spotify、LINE MUSIC、YouTube Music、Amazon Music Unlimitedなどでも聴けるようになった。
したがって、
2012年3月14日:CD作品として発売
2021年2月22日:デジタル配信開始
と整理できる。
楽曲時間
「狐の恋文」の長さは2分11秒である。
比較的短い作品であり、同じ作詞・作曲コンビによる、
「コブラの踊り」1分22秒
「カエルのお相撲さん」1分43秒
「狐の恋文」2分11秒
はいずれも数分以内の小品として収録されている。
この点からも、長い物語歌というより、短い詩の世界を音楽化した童謡・歌曲としての性格が強い。
狐関連楽曲としての位置付け
「狐の恋文」は、公開資料が比較的少ないため、歌詞の物語を過剰に補わずに紹介する必要がある作品である。
確実に確認できるのは、
タイトルが「狐の恋文」
作詩が石坂まさを
作曲が新藤建也
新藤きみ子が歌唱
2012年の『日本の詩をうたう』に収録
「コブラの踊り」「カエルのお相撲さん」と並ぶ動物題材作品
童謡・日本歌曲を中心とするアルバムに収録
という点である。
妖狐、九尾の狐、稲荷信仰などを扱う作品であることを示す資料は見つかっていない。
そのため本作は、
「恋文」という極めて人間的な文化を狐へ重ねた、童話的な狐歌曲
として位置付けるのが適切である。
狐を恐ろしい妖怪としてではなく、恋をすることのできる一人の登場人物のように扱ったタイトルは、日本の童謡・童話における動物擬人化の魅力を感じさせる。
歌詞や作者による詳細な作品解説が確認できれば、狐が誰に恋文を送ったのか、どのような恋が描かれているのかをさらに深く掘り下げられる作品である。