あきぎつね 秋ぎつね
シンガーソングライター・谷山浩子による楽曲である。 作詞は栗田美幸、作曲は谷山浩子。1988年発売のアルバム『しっぽのきもち』に収録されている。同アルバムは子ども向けの楽曲を集めた作品集で、「秋ぎつね」は3曲目に収録された。 本作では、秋の山を舞台に、一匹のキツネの恋が描かれる。好きな相手を思って行動するキツネの姿を人間の恋愛になぞらえた、かわいらしさと切なさをあわせ持つ楽曲である。
基本情報
タイトル:秋ぎつね
歌:谷山浩子
作詞:栗田美幸
作曲:谷山浩子
編曲:岡崎倫典
収録アルバム:しっぽのきもち
アルバム発売年:1988年
収録順:3曲目
谷山浩子本人によれば、この曲はニッポン放送の「動物愛護キャンペーン」で募集された歌詞に曲を付けた作品で、作詞者の栗田美幸は当時高校生だったという。
楽曲について
「秋ぎつね」は、秋の中で恋をするキツネを主人公とした物語性の強い楽曲である。
主人公のキツネは、気になる相手を探して山を駆け回る。しかし、その恋は思うようには進まず、やがて相手にはすでに想い人がいることを知ることになる。
動物であるキツネを主人公としながら、その心情は人間の片思いや失恋と非常によく似ている。恋する喜び、相手を探す期待、そして思いが届かなかった悲しさが、秋という少し寂しさを感じさせる季節の中で描かれている。
また、キツネの鳴き声を思わせる響きを取り入れた表現が繰り返されることで、主人公がキツネであることを印象付けながら、童謡のような親しみやすさも生み出している。
キツネとの関係
本作は、タイトルだけでなく、楽曲の主人公そのものがキツネである。
山を駆け回ったり、尻尾を振ったりする姿など、キツネらしい外見や行動を取り入れながら、一方では恋をして悩み、涙を流すという人間的な感情を持つ存在として描かれている。
特に特徴的なのが、「人間になる」という発想が物語の中に登場することである。
日本の昔話や伝承では、キツネは人間へ化けることのできる動物として古くから描かれてきた。「秋ぎつね」における人間になるという発想も、そうした日本文化におけるキツネのイメージを連想させる。
ただし、本作のキツネは人間を騙したり化かしたりする妖しい存在ではない。恋に悩み、失恋に傷つく純粋な存在として描かれており、「人間に化けるキツネ」という伝統的なモチーフを、恋愛を題材としたかわいらしい物語へと変化させている点が特徴である。
秋とキツネ
タイトルにある「秋」は、単なる季節設定以上に楽曲の雰囲気を形作っている。
紅葉に染まる山を駆けるキツネという情景は、野生のキツネが暮らす自然の風景を想像させる一方、秋という季節が持つ寂しさは、主人公の片思いや失恋とも重なっている。
キツネの恋が秋に始まり、そして秋の中で終わっていくという構成によって、「秋ぎつね」というタイトルそのものが物語を象徴する言葉になっている。
谷山浩子と「秋ぎつね」
谷山浩子は、幻想的な物語や動植物を題材とした楽曲を数多く手掛けてきたシンガーソングライターである。
「秋ぎつね」が収録された『しっぽのきもち』は、1988年に発売された子ども向け楽曲を集めたアルバムで、「おはようクレヨン」「まっくら森の歌」「恋するニワトリ」なども収録されている。
「秋ぎつね」もまた、子どもが楽しめる動物の物語でありながら、恋がかなわない切なさを描いている。そのため、かわいらしいキツネの歌としてだけではなく、一匹のキツネを通じて片思いを描いた物語歌として楽しめる作品である。