ばいふー/ちぇん るい 白狐/陈瑞
「白狐」は、中国の歌手・陈瑞(チェン・ルイ)が歌唱した中国語のポップ楽曲である。 作詞は孙红莺(孫紅鶯、筆名・玉镯儿)、作曲は李旭辉。2006年4月にインターネット上で発表されて広まり、2007年には陈瑞の同名EP『白狐』に収録された。2008年3月14日発売のアルバム『女人心』にも収録され、現在Apple Musicでも同作の楽曲として配信されている。 本曲の主人公は、千年もの長い年月を生き、人間の男性を愛し続ける「白狐」である。 狐はかつて貧しい書生と深く愛し合うが、彼が長年の勉学を経て科挙に成功し、別の相手と結婚する頃には二人の道は分かれてしまう。それでも白狐は過去の愛を忘れられず、長い時を越えて思い続ける。 つまりタイトルの「白狐」は、千年の修行や長命、人間との恋愛、舞を踊る人間的な姿などを備えた、中国の伝奇・志怪文学に見られる「狐妖」「狐仙」を強く連想させる存在として描かれている。
基本情報
曲名:白狐
中国語読み:Bái Hú(バイ・フー)
歌唱:陈瑞
作詞:孙红莺(玉镯儿)
作曲:李旭辉
編曲:牛渡(『女人心』収録版)
プロデュース:陈伟(『女人心』収録版)
初期インターネット公開:2006年4月
同名EP収録:2007年10月
収録アルバム:『女人心』
Apple Music上の『女人心』版発売日:2008年3月14日
ジャンル:国语流行、Mandopop
言語:中国語(普通話)
国:中国
本曲については時期によって歌詞の異なるバージョンが存在するため、作詞クレジットには注意が必要である。
原曲の作詞者は孙红莺であり、作曲者は李旭辉である。2006年の初期版が広まった後、著作権をめぐる事情から2007年のEP版では陈瑞によって一部歌詞が変更されたとされる。
一部の配信・歌詞データでは「作詞:陈瑞」と表示されることがあるが、原曲そのものの詞作者は孙红莺である。
楽曲の成立
「白狐」の原型は、作詞者・孙红莺が1997年に書いた詩「苦命的狐」にさかのぼる。
その後、2004年には「最后的祝福」と題してインターネット上に発表し、2006年3月10日に内容を改稿して「白狐」と改題した。
このとき孙红莺は「玉镯儿」という筆名を使用していた。
「白狐」を見た人物を通じて作曲家・李旭辉へ歌詞が渡り、李旭辉が短期間で曲を付けた。その後、陈瑞が録音し、2006年4月にインターネット上へ公開されたことで広く知られるようになった。
つまり本曲は、最初からレコード会社主導で制作された一般的な商業シングルとは少し異なる。
詩・歌詞としてインターネットに公開され、
作曲家が曲を付け、
陈瑞が歌唱し、
ネットを通じて人気が拡大した、
2000年代中国の「网络歌曲」と呼ばれるネット発ヒット曲の流れに位置する作品である。
2007年当時の新浪の記事でも、「白狐」は2006年4月に発表され、ネット上で大きく広まった楽曲として紹介されている。
歌詞について
「白狐」の中心にあるのは、人間と狐との叶わぬ恋である。
語り手は自らを、
千年修行してきた狐
千年待ち続けてきた狐
として語る。
その狐が愛した相手は、一人の貧しい書生である。
男性は長年にわたって学問を続けており、白狐は彼がまだ貧しかった時代に愛していた。
しかし時は流れ、男性は科挙で成功する。
そして「洞房花烛」、すなわち結婚の祝いを迎える頃、白狐との関係は終わりを迎える。
白狐はそれでも彼への思いを捨てることができない。
もう一度だけ彼のために舞いたいと願い、かつて自分を放してくれた相手への愛を抱きながら別れていく。
そのため物語は、
出会い
恩
恋愛
長い待機
人間側の成功
結婚
別離
という、中国の狐を題材とした恋愛伝承によく見られる構造を持っている。
白狐と書生
本曲において重要なのが、「白狐」と「书生=書生」の組み合わせである。
書生とは、本来は学問を学ぶ人物を意味するが、中国の古典文学では科挙合格を目指して勉強する若い男性として頻繁に登場する。
「白狐」でも男性は「寒窗苦读」、つまり長い年月にわたって苦労しながら勉強する人物として描かれる。
白狐は、彼がまだ貧しい時代から愛している。
ところが男性がついに成功し、「金榜题名」、すなわち科挙合格・立身出世を果たした頃には、「洞房花烛」という結婚の場面が待っている。
この対比によって、
貧しかった頃の愛
出世後の別れ
という悲劇が強く描かれる。
「人間の書生と異類の女性との恋」は、中国の狐怪談・伝奇文学でも非常に馴染み深い構図であり、本曲もその文化的イメージを強く想起させる。
ただし、特定の古典作品を直接原作としているとする資料は確認できない。
「放生された白狐」
原版の歌詞では、白狐は男性について「千百年前、自分を放生してくれた人物」であるという趣旨を語る。
「放生」とは、捕らえられている生き物を逃がして命を助ける行為である。
したがって、この物語では、
男性がかつて白狐の命を助けた
↓
白狐が男性を愛する
↓
長い年月を経ても思い続ける
という関係を読み取ることができる。
これは狐が人間から受けた恩を返す「報恩譚」を連想させる要素でもある。
ただし、本曲では単純に、
「助けてもらったから恩返しをする」
だけではない。
白狐自身が明確に男性を愛しており、物語の中心は恩返し以上に「叶わなかった恋」に置かれている。
したがって、
「白狐の報恩物語」
だけで整理するより、
「放生による縁をきっかけとした白狐と書生の悲恋」
とする方が適切である。
白狐は妖狐なのか
「ふぉくすなっ♪」で分類するうえで重要なのが、この白狐を「妖狐」と呼べるかどうかである。
歌詞では主人公自身が「狐」と名乗っている。
さらに、
千年にわたって修行する
千年にわたって生きる
人間を愛する
舞を踊る
人間の女性を思わせる姿で描かれる
といった、普通の野生動物ではあり得ない特徴を持つ。
そのため、実在する白い狐ではないことは明らかである。
中国の文化的背景では、長期間修行した狐が霊力を得て人間的な姿や能力を獲得する「狐妖」「狐仙」の物語が多数存在する。
したがって、本曲の白狐を、
「中国の妖狐・狐仙文化を強く想起させる存在」
と位置付けることはできる。
ただし、歌詞で正式に「狐妖」「狐仙」と呼ばれているわけではない。
そのため記事では、
「妖狐そのものであると明記されている」
ではなく、
「千年修行する狐として描かれており、中国の妖狐・狐仙像に非常に近い」
とするのが正確である。
「白狐」の白は何を意味するのか
タイトルでは単なる「狐」ではなく、「白狐」とされている。
中国でも白い狐は古くから神秘的・霊的な存在として語られることがあり、狐妖・狐仙の物語と結び付けられることがある。
しかし、本曲では、
「なぜ白狐なのか」
「白色にどのような象徴的意味を持たせたのか」
について作詞者本人による明確な説明は確認できない。
したがって、
白=神聖
白=高位の妖狐
白狐=特定の狐仙階級
と断定するべきではない。
本曲において確認できるのは、
「主人公が白狐である」
という点までである。
九尾の狐との関係
本曲には九尾の狐は登場しない。
主人公は千年を生きる白狐であるため、
「千年生きているなら九尾になっているのではないか」
と連想したくなるかもしれない。
しかし歌詞には、
九本の尾
九尾
妲己
玉藻前
などの要素はない。
中国の狐妖伝承には、長い修行や長寿によって強い霊力を得るという発想が存在するものの、「千年生きた狐=必ず九尾」という単純な対応関係ではない。
したがって、本曲を「九尾の狐の歌」と分類するのは不適切である。
タグとしても「#九尾の狐」は付けず、「#白狐」「#妖狐」程度に留めるのがよい。
稲荷信仰との関係
タイトルが「白狐」であるため、日本では稲荷神の眷属である白狐を連想する可能性もある。
しかし本曲は中国の作品であり、日本の稲荷信仰との関係は確認できない。
歌詞にも、
稲荷神
神使
神社
鳥居
稲荷大神
などは登場しない。
したがって、日本における「稲荷の白狐」と本曲の白狐を同一視することはできない。
本曲は中国の恋愛・狐妖文化の文脈で理解する方が適切である。
原版と改詞版
「白狐」は、バージョンによって歌詞が異なる点に注意が必要である。
2006年にネット上で広まった原版は孙红莺が作詞したものだった。
その後、2007年に同名EPへ収録される際、著作権をめぐる事情から陈瑞が歌詞を変更したバージョンが制作されたとされる。
改詞版では、冒頭が「千年愛し続けた狐」といった内容になり、紅い化粧や髪を整える描写などが加わっている。
一方、『女人心』などで確認できる原作詞に近い版では、
千年修行する狐
夜中に泣く狐
灯火の中で舞う狐
千年待ち続ける狐
かつて書生に放生された白狐
という物語が描かれる。
そのため「白狐」について調べると、歌詞サイトによって内容や作詞者表記が違う場合がある。
これは単純な誤記だけではなく、実際に複数の歌詞版が存在することが原因である。
「ふぉくすなっ♪」では、
原作詞:孙红莺
作曲:李旭辉
歌唱:陈瑞
を基本情報とし、陈瑞による改詞版も存在する、と補足するのが分かりやすい。
2019年の男女デュエット版
後年には、陈瑞と刚辉による男女デュエット版「白狐」も発表されている。
Apple Musicでは『白狐 - Single』として2019年7月20日発売、陈瑞・刚辉名義で配信されている。
このバージョンでは、女性側の白狐だけでなく男性側の「書生」の視点も歌われる。
白狐が千年修行する狐として語る一方、男性側は自らを書生として語り、長年勉強して功名を得たことなどが示される。
そのため2006年の陈瑞ソロ版よりも、
白狐
書生
という二者の関係が明確になった構成である。
ただし、これは後年の別バージョンであるため、本記事の中心となる2006年の陈瑞版とは区別して扱う必要がある。
『聊斋志异2』との関係
「白狐」は2007年、中国のテレビドラマ『聊斋志异2(聊斎志異2)』でも使用された。
『聊斋志异』は清代の蒲松龄による怪異短編集『聊斎志異』をもとにした映像作品であり、原典には狐妖や鬼、精怪と人間との交流・恋愛を扱う物語が多数存在する。
そのため、「白狐」の世界観とは非常に相性がよい。
ただし重要なのは、
「白狐」が『聊斋志异2』のために最初から書き下ろされた曲ではない
という点である。
楽曲は2006年にすでにネット上で発表されており、ドラマへの使用はその後である。
さらに、このドラマでの使用をめぐっては著作権上の争いも発生し、2009年には権利関係をめぐる裁判について中国メディアで報じられている。
したがって、
「『聊斋志异2』のために作られた白狐の曲」
ではなく、
「既存の『白狐』が後に『聊斋志异2』で使用された」
とするのが正確である。
陈瑞について
陈瑞は中国の女性歌手であり、2000年代のネット音楽文化から広く知られるようになった歌手の一人である。
「白狐」は彼女を代表する楽曲の一つとなった。
2006年当時の中国メディアでも、陈瑞の特徴的な声によって「白狐」の悲しく幽玄な物語が表現され、大きな人気を得たと紹介されている。
現在Apple Musicでも、
『女人心』
『白狐 - Single』
『陈瑞单曲精选集』
などを通じて「白狐」の複数の音源を確認できる。
中国の狐文化との関係
「白狐」は、中国に古くから存在する狐の怪異譚と非常に親和性の高い作品である。
中国の物語では狐が長い年月を経て霊力を持ち、
人間の姿を取る
人間と交流する
人間へ恋をする
人間へ恩を返す
といった物語が数多く語られてきた。
「白狐」でも、
千年修行する狐
人間の書生との恋
放生された過去
人間的に舞う姿
叶わない恋
長い年月を越える愛
という要素が揃っている。
そのため、中国の「狐妖」「狐仙」の文化を背景として読むことができる。
ただし、本曲が『聊斎志異』の特定の一篇や、特定の狐伝説を直接原典として書かれたという資料は確認できない。
したがって、
「『聊斎志異』の○○という話を原作とする」
などと断定することは避けるべきである。
キツネとの関係
本曲における狐との関係は極めて強い。
主人公そのものが白狐である。
さらに白狐は、
千年にわたって修行する
千年にわたって待ち続ける
人間の書生を愛する
かつて書生に放生された縁を持つ
人間のように舞う
長い年月を越えて愛を忘れない
という物語の中心人物である。
したがって、
「タイトルに狐があるだけ」
でも、
「人間を狐にたとえただけ」
でもない。
明確に狐という存在を主人公にした物語歌である。
ただし、これは自然界の狐ではない。
千年修行するという設定から、
「中国の妖狐・狐仙を思わせる創作上の白狐」
として分類するのが適切である。
狐関連楽曲としての位置付け
「白狐」/陈瑞は、「ふぉくすなっ♪」において狐関連性が非常に高い楽曲である。
分類するなら、
「白狐を主人公とする楽曲」
「人間と狐の異類婚姻・異類恋愛を扱う楽曲」
「狐の報恩譚を連想させる楽曲」
「中国の妖狐・狐仙文化を強く反映した悲恋歌」
となる。
特に特徴的なのは、狐が単なる怪物や悪役ではなく、
愛する
待ち続ける
恩を忘れない
別れに苦しむ
という、非常に人間的な感情を持つ存在として描かれていることである。
西洋寓話に多い「狡猾な狐」とは異なり、本曲の狐は「千年の愛を抱える悲劇的な女性的存在」として描かれる。
一方で、
九尾の狐
妲己
玉藻前
稲荷の白狐
など、特定の狐伝承へ直接結び付ける根拠はない。
そのため最も正確な位置付けは、
「中国の妖狐・狐仙文化を背景に連想させる、千年を生きる白狐と人間の書生との悲恋を描いた楽曲」
である。
狐がタイトルだけでなく歌詞、主人公、物語構造、作品世界のすべてに深く関わるため、「ふぉくすなっ♪」の狐関連楽曲の中でも特に重要度の高い一曲として扱える。