せちゅらぎつね セチュラギツネ
ペルーとエクアドルの乾燥地帯に暮らす小型のキツネ。動物だけでなく果実も食べ、植物の種を運ぶ役割を担っている。
概要
セチュラギツネは、南米の太平洋側に分布する、イヌ科スジオイヌ属の動物である。学名は Lycalopex sechurae、英名は「Sechuran fox」。英語では「Peruvian desert fox」とも呼ばれる。
名前はペルー北西部のセチュラ砂漠にちなむ。ただし、砂漠だけに暮らす動物ではなく、乾燥林や海岸なども利用する。灰色を基調とした毛並み、大きな耳、先端の黒い尾が特徴である。出典:Cossíos「Lycalopex sechurae」
基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
和名 | セチュラギツネ |
学名 | Lycalopex sechurae |
英名 | Sechuran fox、Peruvian desert fox |
分類 | 哺乳綱・食肉目・イヌ科・スジオイヌ属 |
分布 | ペルー西部、エクアドル南西部 |
頭胴長 | 約50~78cm |
尾長 | 約27~34cm |
体重 | 約2.6~4.2kg |
主な生息環境 | 砂漠、乾燥林、海岸、農地など |
食性 | 果実、昆虫、小型脊椎動物などを利用する雑食性 |
主な活動時間 | 夜間 |
上記の体の大きさは、ペルー北部のオスについて報告された測定範囲である。メスを含む種全体の大きさを網羅した数値ではない。出典:Cossíos「Lycalopex sechurae」
姿と特徴
体は灰色を基調とし、腹側は白色からクリーム色を帯びる。顔も灰色で、目の周囲には細い赤褐色の縁取りがあり、鼻先は暗色、上唇やあごは白っぽい。
耳の裏や脚には赤褐色が見られる。尾は比較的長く、毛が密に生え、先端が暗色になる。全身が鮮やかな赤褐色になるキツネではなく、落ち着いた灰色の体に部分的な赤みが加わる姿である。出典:Cossíos「Lycalopex sechurae」
分類とキツネとの関係
セチュラギツネは、スジオイヌやクルペオギツネなどと同じ Lycalopex 属に分類される。アカギツネなどが属する Vulpes 属とは異なる、南米のイヌ科動物の一種である。
古い資料では Pseudalopex 属の動物として扱われていることがあり、文献を探す際には属名の違いにも注意が必要となる。出典:IUCNイヌ科動物専門家グループ
分布と生息環境
分布域は、エクアドル南西部からペルー西部にかけての、アンデス山脈の西側である。海岸に近い低地だけでなく、山麓の環境も利用する。
植物がまばらな砂地、乾燥林、農地など、さまざまな場所から記録されている。分布の南限や標高の上限については、なお調査が必要とされる。出典:IUCNイヌ科動物専門家グループ
食べ物と乾燥地での暮らし
食性は柔軟で、季節や場所によって利用する食べ物が変わる。昆虫、ネズミ類、鳥の卵、動物の死骸に加え、果実や種子を含む植物のさやなども食べる。
乾燥地に暮らすキツネというと、小動物を狩る姿を想像しやすいが、セチュラギツネにとって植物質も重要な食料である。出典:Nature and Culture International
水へのアクセスが限られた環境でも生活できると考えられている。ただし、「水分が不要」という意味ではなく、飲み水の乏しい環境への適応として捉える必要がある。出典:IUCNイヌ科動物専門家グループ
植物の種を運ぶ役割
果実を食べるセチュラギツネは、種子を別の場所へ運ぶ「種子散布者」でもある。
2019年に発表された乾燥二次林での研究では、セチュラギツネによる9種の植物の種子散布が確認された。果肉が取り除かれることや、種皮が処理されることによって、発芽が促される効果も示されている。ただし、その効果の大きさは植物によって異なる。
この研究は、果実食に特化していない雑食性の動物でも、植物の繁殖に重要な役割を果たし得ることを示している。出典:Escribano-Avila・2019年研究論文要旨
行動と繁殖
主に夜間に活動し、昼間は地面に掘られた巣穴で休む。単独で行動することが多いが、つがいや小さな家族群で移動する姿も観察されている。
繁殖については情報が少なく、10月に子が生まれた記録などはあるものの、社会生活や子育ての詳細には不明な点が残る。妊娠期間や一度に生まれる子の数について、ほかのキツネの数値をそのまま当てはめることはできない。出典:Nature and Culture International
保全と人間との関わり
IUCNの2017年評価では、セチュラギツネは準絶滅危惧(Near Threatened)とされている。個体数に関する情報は限られ、推定値にも不確実性がある。