きつね/ひなたざかふぉーてぃしっくす キツネ/日向坂46
日本のアイドルグループ・日向坂46による楽曲である。2019年7月17日に発売された2ndシングル『ドレミソラシド』の共通カップリング曲として収録された。TYPE-A、TYPE-B、TYPE-C、通常盤のすべてに収録されている。 作詞は秋元康、作曲・編曲は原田雄一が担当している。恋する女性が素直な気持ちを隠し、相手を惑わせる姿を「キツネ」にたとえた楽曲である。単にタイトルへキツネの名前を使っただけではなく、「化ける」「狐につままれる」「狐の嫁入り」「コンコンという鳴き声」など、狐にまつわるさまざまな言葉や文化的イメージが歌詞全体に取り入れられている。
基本情報
タイトル:キツネ
アーティスト:日向坂46
作詞:秋元康
作曲:原田雄一
編曲:原田雄一
収録シングル:ドレミソラシド
発売日:2019年7月17日
収録位置:2曲目
国:日本
「キツネ」は『ドレミソラシド』の全タイプに収録されている。また、TYPE-A付属Blu-rayにはミュージックビデオも収録された。
後年には、2023年11月8日発売の2ndアルバム『脈打つ感情』初回生産限定盤TYPE-Bにも収録されている。
楽曲について
「キツネ」は、恋愛において本当の気持ちを簡単には見せない女性の心情を、昔から人を化かす存在として語られてきた狐になぞらえた楽曲である。
主人公は相手のことを強く想っているにもかかわらず、興味がないように振る舞う。本当は純粋な気持ちを持ちながら、それを相手に悟られないよう別の自分を演じる。そのような女性の姿が、「化けるキツネ」として表現されている。
楽曲では、恋愛において素直な心をそのまま見せれば傷ついてしまうかもしれないため、自分を守るために別の姿へ「化ける」という発想が使われている。
明るくキャッチーなアイドルソングでありながら、人間が本心を隠したり、相手に合わせて自分を演じたりするというテーマも含まれている。
キツネとの関係
本作は、狐に関連する言葉やイメージが非常に多く盛り込まれた楽曲である。
中心となるのは「化けるキツネ」というイメージである。
日本の昔話や伝承では、狐は人間の姿へ化けたり、人間を惑わせたりする動物として数多く語られてきた。本作ではその性質を恋する女性へ置き換え、本心を隠しながら相手に接する女性を「キツネ」と表現している。
さらに「狐につままれる」という慣用句を思わせる表現も使用される。
「狐につままれる」とは、狐に化かされたように、何が起こったのか分からずぼう然とする状態を表す言葉である。本作では、相手の男性が女性の演技や態度に翻弄され、気付けばその魅力に引き込まれているという恋愛表現へ変化している。
狐の嫁入り
歌詞には「狐の嫁入り」も登場する。
狐の嫁入りは、日本で晴れているにもかかわらず雨が降る「天気雨」を表す言葉として知られている。また、人間には見えない狐たちが婚礼を行っているという伝承や、夜に連なる怪火を狐たちの婚礼行列に見立てる伝承なども存在する。
本作では、この天気雨を人間の複雑な感情へ重ねている。
晴れているのに雨が降るという矛盾した空模様は、「好きなのに好きではないように振る舞う」という主人公の矛盾した心とも重なる。狐の嫁入りという伝承的な言葉を、現代の恋愛感情を表す比喩として使用している点が特徴である。
キツネの鳴き声
楽曲には、キツネの鳴き声として日本で一般的に表現される「コンコン」も取り入れられている。
実際のキツネは多様な鳴き声を発する動物であり、必ずしも「コンコン」と鳴くわけではない。しかし、日本の童謡や昔話、児童文化などでは「コンコン」がキツネを表す代表的な擬声語として長く定着している。
「キツネ」では、この誰にでも分かりやすい鳴き声を楽曲の掛け声として活用することで、狐のキャラクター性を強く印象付けている。
ライブでもこの部分は楽曲を象徴する要素となっており、メンバーの公式ブログでも「コンコンコンコンコーン!」という表現とともに「キツネ」が語られている。
タヌキとの関係
本作では狐だけでなく、タヌキも登場する。
狐と狸は、日本の昔話やことわざなどでしばしば一緒に登場する動物である。どちらも人を化かす存在として語られることがあり、「狐と狸の化かし合い」という表現も知られている。
本作では、人間社会の中では誰もが多少なりとも本心を隠したり、相手に合わせて振る舞ったりしているという考え方を、狐と狸を使ってコミカルに表現している。
そのため、本作における狐は特定の一人だけを示すものではなく、人間が持つ「本当の自分を隠す性質」そのものを象徴する存在としても描かれている。
ミュージックビデオ
「キツネ」のミュージックビデオは2019年6月20日に公開された。監督は荒伊玖磨、振付は木下菜津子が担当している。
ミュージックビデオで使用された衣装は、その後も日向坂46の公式コンテンツで「キツネ衣装」と呼ばれており、楽曲独自のビジュアルとして定着している。
「キツネ」はライブでも繰り返し披露されてきた。2019年の「ひなくり2019」について、小坂菜緒は公式ブログで同曲を披露した際の楽しさとともに、狐の鳴き声を思わせる掛け声について触れている。金村美玖も同公演について、「ドレミ」「キツネ」「NO WAR in the future」と続く流れで会場の盛り上がりが高まったことを記している。
日向坂46について
日向坂46は、日本の女性アイドルグループである。けやき坂46として活動した後、2019年2月11日に日向坂46へ改名し、同年3月27日にシングル『キュン』でデビューした。
「キツネ」は、そのデビューから間もない2019年に発表された楽曲であり、日向坂46初期のライブでも披露され続けてきた作品である。
狐を単純な動物として描くのではなく、「化ける狐」「狐につままれる」「狐の嫁入り」「コンコンという鳴き声」、さらに狸との化かし合いまで、日本文化に存在する複数の狐イメージを恋愛へ落とし込んでいる。
狐に関連する言葉や文化的モチーフが楽曲全体へ数多く盛り込まれているという点で、現代のJ-POPにおける特徴的なキツネ楽曲の一つである。