おおみみぎつね オオミミギツネ
食肉目イヌ科オオミミギツネ属に分類されるアフリカの哺乳類である。
概要
オオミミギツネは、食肉目イヌ科オオミミギツネ属に分類されるアフリカの哺乳類である。名前のとおり非常に大きな耳を持ち、シロアリなどの昆虫を主食とする、キツネの仲間としては珍しい生態を持つ。
現生のオオミミギツネ属に含まれる種はオオミミギツネのみである。アカギツネやフェネックが属するキツネ属とは別の系統であり、大きな耳と昆虫食に適応した特殊な歯が大きな特徴となっている。Mammal Diversity Database
基本情報
- 分類:哺乳綱・食肉目・イヌ科・オオミミギツネ属
- 学名:Otocyon megalotis
- 英名:Bat-eared fox
- 頭胴長:約46~66センチメートル
- 尾長:約23~34センチメートル
- 肩高:約30~40センチメートル
- 体重:約3~5.4キログラム
- 耳の長さ:約11.4~13.5センチメートル
- 分布:アフリカ東部および南部
- 生息環境:乾燥した草原、サバンナ、低木地など
- 食性:主に昆虫を食べる
- 活動時間:地域や季節によって夜行性または昼行性
- IUCNレッドリスト:低懸念(LC)
名前の由来
和名のオオミミギツネと英名のBat-eared foxは、いずれもコウモリを思わせる大きな耳に由来する。
属名のOtocyonは、ギリシャ語で「耳」を意味する語と「犬」を意味する語から作られている。種小名のmegalotisにも「大きな耳」という意味があり、学名全体がこの動物を象徴する耳を表している。San Diego Zoo Wildlife Alliance
外見
体は小型で、四肢は比較的短い。体毛は灰褐色から黄褐色で、腹部や喉は淡い色をしている。目の周囲、吻、耳の外側、四肢の下部、足先、尾の先端は黒い。目の周囲にある黒い模様は仮面のようにも見える。
最大の特徴である耳は、長さが13センチメートルを超えることがある。大きな耳はわずかな物音を捉え、草むらや地中に潜む昆虫を探し出すために役立つ。また、耳には多くの血管が通っており、体内の熱を外へ逃がして体温を調節する役割も持っている。
分布
アフリカ大陸の東部と南部に分布するが、分布域は一続きではなく、大きく二つに分かれている。
東部の個体群はエチオピア、南スーダン、ソマリア、ケニア、タンザニア周辺に分布する。南部の個体群はアンゴラ南部、ナミビア、ボツワナ、ジンバブエ、南アフリカ共和国などに分布している。
この分布は、主要な食物となるシロアリの分布と深く関係している。短い草が広がるサバンナや乾燥した草原を好み、深い森林や植物が密生した地域ではあまり見られない。Animal Diversity Web
特殊な歯
オオミミギツネは46~50本ほどの歯を持ち、一般的なイヌ科動物よりも歯の数が多い。通常のイヌ科動物より上顎と下顎の臼歯が多く、一つ一つの歯は比較的小さい。
この歯は、大型動物の肉を切り裂くことより、シロアリや甲虫などの小さな昆虫を素早くかみ砕くことに適している。下顎には咀嚼に使う筋肉が発達しており、大量の昆虫を効率よく食べられる構造となっている。
大きな耳で昆虫の動きを探り、多数の小さな歯で素早くかみ砕くという、聴覚と歯の両方を使った昆虫食への適応が見られる。Animal Diversity Web
食性
食物の中心はシロアリであり、地域によっては食事の大半を占める。特に地表へ出て草を食べる収穫シロアリの仲間は重要な食物である。ほかにもフンコロガシとその幼虫、バッタ、サソリ、クモ、ヤスデなどを食べる。
昆虫以外では、ネズミなどの小型哺乳類、トカゲ、鳥の卵や雛、果実などを食べることもある。ただし、ほかの多くのキツネと比べると小型脊椎動物を積極的に狩る割合は低く、昆虫への依存度が非常に高い。
地面へ鼻を近づけ、左右の耳を動かしながらゆっくりと歩き、音を頼りに昆虫を探す。獲物の位置を突き止めると、前脚で素早く地面を掘って捕まえる。有蹄類の糞に集まる甲虫を狙い、シマウマやヌーなどの近くで採食することもある。San Diego Zoo Wildlife Alliance
生態
オオミミギツネは、つがいとその子どもを中心とする小さな家族群で生活することが多い。生息地域によって社会構造に違いがあり、アフリカ東部では1頭の雄と複数の雌、その子どもたちからなる群れが見られることもある。
家族は同じ巣穴で眠り、一緒に休息や毛づくろい、遊びなどを行う。ほかの群れと行動圏が重なる場合もあり、キツネの仲間としては比較的社会性が強い。
活動時間は気温とシロアリの活動に左右される。東アフリカでは主に夜間に活動するが、南部では暑い夏は夜行性、寒い冬は昼行性になる傾向がある。
敵に襲われた際は積極的に戦うよりも、素早く走って逃げる。走行中に急激に方向を変える能力に優れ、ジャッカル、ハイエナ、猛禽類などから身を守る。
巣穴
前脚の爪を使って地面を掘り、自ら巣穴を作る。ツチブタなどの動物が残した穴や古いシロアリ塚を利用することもある。
巣穴には複数の出入口、通路、部屋があり、外敵や強い日差しから身を守る場所となる。一つの家族が行動圏内に複数の巣穴を持ち、状況に応じて使い分けることもある。出産と子育ても巣穴の中で行われる。
繁殖
通常は一夫一妻のつがいを形成し、年に一度繁殖する。繁殖時期は地域によって異なり、妊娠期間は約60~75日である。一度に2~6頭ほどの子どもを産む。
子どもは生後間もない時期を巣穴の中で過ごし、成長すると外へ出て親と行動するようになる。生後5~6か月ほどで成獣に近い大きさとなる。
オオミミギツネでは、雄が子育てに積極的に参加する。雄は子どもの見張り、毛づくろい、遊び、食物の提供などを行い、場合によっては雌以上の時間を育児に費やす。子どもは親と一緒に採食しながら、昆虫の探し方や捕まえ方を学んでいく。Animal Diversity Web
人間との関係
昆虫を大量に食べるため、農作物や家畜へ直接大きな被害を与えることは少ない。シロアリや甲虫などを捕食することで、昆虫の個体数を調整する役割を担っている。
一部の地域では毛皮や食用を目的として狩猟されることがある。また、家畜の子どもを襲うという誤解から殺される場合もあるが、実際の食物はほとんどが昆虫である。
道路の近くで昆虫を探す個体は交通事故に遭うことがあるほか、家畜や飼い犬から感染症が広がる可能性もある。
キツネとの関係
オオミミギツネはイヌ科に属し、外見や一般名からもキツネの仲間として扱われる。ただし、アカギツネやフェネックなどが属するキツネ属ではなく、独立したオオミミギツネ属に分類される。
一般的なキツネがネズミ、鳥、昆虫、果実などを幅広く食べるのに対し、オオミミギツネはシロアリを中心とした昆虫食へ強く特化している。歯の数が多いこと、つがいや家族で行動すること、雄が子育てに深く関わることなども特徴的である。
大きな耳はフェネックにも見られるが、フェネックが砂漠に暮らすキツネ属の動物であるのに対し、オオミミギツネは主にサバンナや草原に暮らす別属の動物である。
保全状況
IUCNレッドリストでは「低懸念(LC)」に分類されており、東部および南部アフリカでは比較的広く生息している。Animal Diversity Web
種全体として絶滅の危険性は低いものの、地域によっては狩猟、交通事故、農地開発、生息環境の変化、感染症などの影響を受ける可能性がある。主要な食物であるシロアリと、それを支える短い草原環境を維持することが、本種の生息にとって重要である。